雑記

お腹の筋肉を鍛えるために必要な基礎知識

「お腹の筋肉を鍛えろ」というけれど、、、
そもそもお腹の筋肉を鍛える意味がわからない

「走る」「飛ぶ」「投げる」これらに代表されるヒトの基本的な動作は常に、お腹の周りを安定させながら手足を動かすことを要求されます。

近年、お腹周りに存在する筋肉達(以後、体幹筋群と呼びます)を鍛えると、スポーツ中の動作が安定し、腰痛の予防や治療に効果的であることは、これまで多くのメディアや書籍によって、一般の方々にも広く浸透してきました。

体のトラブルを「運動不足」と結びつけることで、内科的な治療の他にも自分たちができることを見出す風潮が高まってきたことは、理学療法士を経験した私にとって、とても喜ばしいことだと感じています。

限られた時間を有効に使って効果的なトレーニングを行うには、運動するみなさんが正しい姿勢を身に着け、疲労の程度を確認してあげる必要があります。

したがって、腰痛の改善やスポーツパフォーマンスを向上させるために必要な、体幹筋群の機能向上を図るエクササイズを実施するうえで、「なぜお腹を鍛える必要があるのか」ということを理解することはとても重要です。

一方で、体幹筋群はそれぞれ特徴的な働きを持つ筋肉がたくさん集まって構成されていることから、体幹筋群が持つ特徴について理解することが難しく、一般の患者さんにおいても理解が追い付かずに苦労されている方も少なくありません。

そこで今回は、体幹筋群に対するトレーニングをすることの意味を理解するために、お腹の筋肉の働きをものすごくざっくり理解してもらいたいと思い、この記事を書きました。

一人一人が、ご自身の言葉で、体幹筋群をトレーニングする意義について説明できるようになってもらい、お腹を鍛えることのきっかけ作りにしていただくことが、今回の目的になります。

腰痛の患者さんなどの教育に使うため、私ができる限り勘弁に説明した経験をもとに、コトニクォリティーで紹介します!

それでは、がんばっていきましょう!

毎度同じような言葉を用いていますが、本記事は、体の筋肉の仕組みなど全くわからない方々に理解してもらえるように書いています。
専門職の方々からすればとても雑駁で、一部語弊を招くような表現も見られるかもしれません。
そこは十分理解した上で書いていることをご理解ください。

体幹筋群とは

お腹を支える筋肉たち

体幹筋群の分類を、簡便にしたもの
四方を筋肉の壁に覆われている

「体幹筋群」とは、ずばり「お腹の周りに存在する筋肉たち」のことです。

体幹部は「お腹」「よこっぱら」「頭」「お尻」「背中」と四方を筋肉に覆われた「入れ物」のような構造をしていると考えると分かりやすいと思います。

もちろん、その入れ物の中には内臓とか、骨とかそういったものが入っているわけです。

具体的には、、、

お腹+よこっぱら・・・腹筋
背中・・・背筋群
頭・・・横隔膜
お尻・・・骨盤底筋群

という、ざっくりとした筋肉の集まりで「面」をなしていると考えるとよいでしょう。

これらの筋肉たちがちょうど良く収縮することで、入れ物の中の圧力を高くしたり、入れ物自体の強度を高めたりして、お腹まわりの強さが増すわけです。

 体幹部(お腹)は四方を「体幹筋群」と言われる筋肉たちによって囲まれている。
 それらの筋肉がちょうど良く収縮することで、体幹部の剛性(がっしり具合)を調整している。

もちろんですが、それぞれの筋肉たちには、解剖学的に正式な名称がついています。

そういった細かいことについては、たくさんのサイトが分かりやすく解説していますので、そちらを参照していただくのが良いでしょう。

これらのどこかにトラブルが起きると、、、

想像に安いかと思いますが、この体幹部を構成している筋肉の面のどこかがうまく働かなくなると、お腹の圧力が逃げてしまったり、適切な剛性が保てなくなることがあります。

そうすると、別の筋肉がそれを補ったり、そもそも圧力が逃げるような動作を避けるようになったりして、人の運動の異常や痛みとして長期的には体に現れるようになるわけです。

このように聞いていただければ、問題が顕在化する過程について、体幹筋群の構造をなんとなく想像ができるのではないでしょうか。

そう、みなさんの体にこのようなことが起きたら大変だな、お腹の圧力とかいうのが大切なんだな、という気持ちになることが、体を理解することの第一歩だったりします。

おもしろいでしょ?

コトニが整形外科のクリニックで働いていた頃は、患者さんの前で絵を書いて、できるだけ時間をかけて具体的に説明するようにしました。

相手の痛みや悩みに寄り添う方が大切だし、患者さんとしても安心するんじゃないですかね。

とにかく、ざっくり、じっくりです(笑)

運動中の体幹筋群の振る舞い

お腹周りの筋肉が、お腹の圧力を高めたり、お腹自体の剛性(がっしり具合)を高めることについては、なんとなく想像していただけたのではないかと思います。

次に、それぞれのお腹の「面」を構成している筋肉たちの働きを、簡単に説明し、具体的な動作を例にあげてお腹の働きについて理解してもらえるようにしたいと思います。

代表的な腹筋「腹直筋、内外腹斜筋、腹横筋」

Henry Vandyke Carter – Henry Gray (1918年) Anatomy of the Human Body (See “ブック” section below)Bartleby.com: Gray’s Anatomy, Plate 392, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=531409による

お腹と横っ腹の働きについて

いわゆる「腹筋」というものですね。

こんかいは、お腹の前側とよこっぱらをまとめてしまいました。

これらの筋肉が頑張ることで、お腹をぎゅーっと絞って、お腹の中の圧力を高めることで背骨を守ったり、手や足が強く動いた時に体がちゃんと追随できるようになるわけです。

ですので、これらの筋肉を強くすることはとても大切なわけですね。

背中の働きについて

背中の筋肉の多くは、「背骨にくっついています」。

ご存知の通り、背骨はたくさんの骨がブロックのように積み重なって、しかも複雑なカーブをえがいているので、背骨についている筋肉はその背骨の構造を支えるために働きます。

せっかくお腹周りの筋肉がギューっとお腹を絞っても、背骨がぐにゃぐにゃでは体がシャキッとしませんものね(笑)

これらの筋肉の中にはまた、年齢が進むとともに脂肪が入り込んでしまうことがこれまでの文献で報告されています。

背中の筋肉の衰退は、腰痛とも関連があるとされているので、医学的にはよく注目されている筋肉たちです。

ひとまず、これくらいの理解にしておきましょうね。

頭側の働きについて

お腹の筋肉の蓋の役目をしている代表的な筋肉の中に、「横隔膜」が挙げられます。

横隔膜も、呼吸に合わせてお腹の圧力を高めたり、開放したりする他、呼吸に合わせて他の体幹筋と連動して頑張る筋肉です。

運動中、呼吸を一定にとか、力を入れるときに息を吐くとか、呼吸と運動を合わせたほうがよいという理屈の中に、このような蓋をする筋肉の役割が関わっているわけです。

お尻側の働きについて

お尻、というと「大殿筋」を想像するかもしれませんが、、、

こんかいは「骨盤底筋群」について取り上げたいと思います。

これらは、骨盤の中に存在し、体幹筋の底を成す筋肉群と言われています。

上からかかった圧力をしっかりと体感部にとどめておくために、下からもある程度押し上げたりしてやる必要がある、というイメージです。

腰痛患者さんの中には、この骨盤底筋群のトラブルが見つかる方もいらっしゃると思います。

具体的な運動中の体幹筋群の働きについて

体をかがめて荷物を持った時の、お腹を横から見た図
背骨、内臓、お腹の筋肉(腹筋群)、背骨をつなぐ筋肉(背筋群)を簡略に示している

これまで説明した働きが具体的にどのように関わっているのか、ということを体をかがめて荷物を持つような動作を例にして、説明したいと思います。

① 動作中の背骨にかかる力

まず、体をかがめると、重力や手に持った荷物の重さにより、背骨が下に落ちようとする力が働きます。
また、背骨と背骨との間に剪断力のようなストレスもかかります。

② 背筋群の働き

こうした背骨にかかる力に対し、背骨どうしに付着している筋群(背筋群)が働き、背骨がぐにゃっとしてしまわないように、固定してくれます。

③ お腹周りの筋群の働き

さらに、お腹周りの筋肉がギューっと体感部を絞り、内臓を通じてお腹から背中へ背骨を押し上げてくれます。

こうした一連の働きによって、背中に過剰なストレスが生じないように頑張っています。

もちろん、呼吸に合わせて横隔膜も働きますし、お尻側の骨盤底筋群もお腹の圧力が抜けぬように無意識的に収縮して、体感部を安定させることに関わっています。

なんとなく、理解できましたか?

そう、姿勢の変化によって、体幹筋群の全てが運動してくれることで、人は安定した運動が行えるようになるんですね!

 運動中、体幹筋群は無意識に働いている。
 お腹を引き締めて圧力を高めたり、背骨同士を引きつけあったりして、背骨にかかるストレスに対して抵抗してくれている。
 これが破錠すると、ある部分に負荷が集中したり、負荷がかかる動作を避けようとして、人の運動は変化していく。
 場合によっては、この変化が問題として顕在化してくる。

体感筋群をトレーニングする、とはどういうことか

ここまでで、体感筋群が持つ働きについて、ざっくりと理解してもらえたと思います。

それでは最後に、体幹筋群をトレーニングすると、体にどのような変化が起こるのか、ということについて簡単に解説したいと思います。

体幹筋群の主な働きを強化することができる

先に、体幹筋群がもつ主な働きを二つ、紹介します。

1.運動の主働作筋としての働き

主働作筋!?

また難しい言葉が出てきましたね。

主働作筋とは、関節の運動を担う主な筋肉のこと、です。
例えば、膝関節を伸ばすときには、「大腿四頭筋」という筋肉が大きくその働きを担っています。

つまり、大腿四頭筋無くしては、膝を伸ばすことはできないのです。
このように、関節の運動を担う主な筋肉を運動学的には主働作筋、と呼びます。

お腹も、曲げたり、反ったり、捻ったりできますよね。
言い換えれば、体幹筋群は運動の主な働きを担う筋肉になります。

体幹部を動かす働きがある、といっても良いでしょうね。

2.体幹部を安定させ、四肢の運動の土台になる働き

こちらは、先ほどの章で説明した通りです。

今回は、こちらにスポットを当てていきましょう。

運動をした時の、パフォーマンスが向上する

アスリートの強烈な脚力を無駄なく推進力に変えるのも、体幹筋群の働きがあってこそ。

これは大きいでしょう。

ただ、もともとパフォーマンスが高い方には、トレーニング効果を実感しづらい部分でもあります。

冒頭のプロローグにも書きましたが、手足を動かし、体を推進させるためには土台になる体幹部の安定性が必要不可欠になります。

例えば、ダッシュをするために足が地面を強く蹴った時、体幹が安定していないと体を前方に推進する力がにげてしまい、十分に加速力として発揮されないようなことが起こります。

このように、手足の運動が効率よく運動(あるいは仕事)に変換されるためにも、体幹筋群を強化するメリットはあるわけです。

さらには、安定した体幹部を獲得した方は、普段の筋トレの時にも効率が向上し、より安全に高い負荷の運動を行うことができるようになると思います。

非特異腰痛に分類される腰痛の改善に貢献する

治療だけではなく、患者さんの悩みをよく聞き、問題点を一緒に探し出すのも私たち理学療法士の大切な役割です。

非特異腰痛?
聞いたことがありますでしょうか。

腰痛といっても、医学的にはいくつかの分類があります。
非特異腰痛はその中でも、「体に特に明らかな原因が見出せないのに、腰痛が出現している状態」という意味です。

その中には、骨格筋が十分に強くなく、運動中に悲鳴を上げることで出現する腰痛も含まれます。

こういった状況においては、体幹筋群を適切な方法で強化することで、腰痛を改善させることができることを経験しています。

かくいう私も、理学療法士として2年目の時、深刻な腰痛に悩まされていました。

医師からは、「レントゲンも、MRIでも問題はない」と言われてしまい、途方に暮れたのを覚えています。
そこからきっちりトレーニングをしたところ、今は腰痛は一切感じません。

私は筋肉由来の腰痛であった、ということが明らかになったわけです。

 運動中は、様々な働きをもつ体幹筋群が協力して働くことで、お腹を安定させ、背骨にかかる過剰なストレスに対抗してくれるという働きを持つ。
 これらの働きに体幹部を動かす主働筋としての働きも相まって、手足によって生み出された力を動作に正しく反映することが可能となる。
 また、これらの体幹筋群のどこかに問題が生じると、動作の変化や痛みとして体に現れる。
 筋肉などの機能不全を原因とした非特異腰痛においては、適切な運動の実施により改善させることが可能なこともある。

【小ネタ】体幹筋群はトレーニングで大きくなるの?

手足の筋肉と同じように、適切な負荷をかければ、体幹筋群もトレーニングによって大きくなる(これを筋肥大と呼びます)ことが、これまでの研究によって明らかになっています。

先ほど申したように、体幹筋群はもともと「異なる働きを持つ筋肉たちが集まって構成されている」ことから、一つの運動をしたら全部が強くなる、というわけではありません。

したがって、体幹部を安定させるためには、複数の運動を組み合わせて実施することが臨床的には好ましいとされています。

コアスタビリティートレーニングの代表例とされるプランク動作。
腹筋を強くすることに十分な負荷を与えることが可能であることが明らかになっている。

体幹部を安定させる、という観点から言えば、必ずしも筋肥大を起こすほどの負荷をかけなくても、しっかりとトレーニング効果が現れることも報告されています。

一般的に、筋トレによる負荷の強さは、「全力で頑張った時の筋発揮」を基準にして、その何パーセントの頑張りが見られたか、ということで決めています。

これまでの研究から、全力の45〜50パーセントの頑張りだと筋力向上。
45パーセント以下の運動をでは筋持久力(力を発揮し続ける時間)の向上や他の体幹筋たちと協力して体幹部を安定させる能力(筋協調性とも言います)の向上が見込まれる、と言われています。

例えば、お腹周りの筋トレの代表例であるプランク運動(上の図)では、お腹周りの筋肉のうち腹直筋や外腹斜筋という筋肉が、全力で頑張った時の力の45%ほどの頑張りをしてくれると言われています。

つまり、この運動でも十分にお腹周りの筋力アップにつながる、というわけです。
※もちろん、普段から高強度のトレーニングをされている方においては、その限りではありません。

いかがでしたでしょうか。

今回は、体幹筋群のトレーニングに先立ち、体幹筋群が持つ特性や働き、そして体幹筋群のトレーニングをする意義などについて、思いっきりざっくりと解説しました。

大事なのは、例えばこの記事の一部分だけでも理解していただき、ぼんやりながらも説明できることが大切だと思います。

理解はトレーニングの第一歩!
悩みは解決の出発点!

コトニでした!

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